【コラム】2024年5月 子どもに寄り添うことは難しいけれど
2024年5月の竹内先生のコラム(お手紙)です。自筆を大切にしたいので、ファイルを張り付けています。
----- 以下は参考。テキスト化したものです。-------
子どもに寄り添うことは難しいけれど・・・・・
今、子どもたちにとって、学校はたのしいところ安心して学べるところになっているのでしょうか。最近のニュースから拾ってみます。
奈良教育大学附属小学校では4年でいじめに合い転校したというニュースがありました。奈良教育大附属小と言えば、昔から、先進的な教育実践を提案し続けている学校として、全国でも有名な学校です。そんな学校でもいじめがあるということです。また大阪の受験校で有名な清風高校で2年の生徒がカンニングをして、学校側はその生徒に対して、全科目0点家庭謹慎8日間、反省文日誌を書くこと写経80巻などの処分を言い渡されたのですが、本人は「死ぬという恐怖よりも、このまま周りから卑怯者と思われながら生きていく方が怖くなってしまった。」という遺書を残して自殺したというニュースが流れました。また、守口市の中学校では、全学年のクラス替えを発表した後に3年のクラス編成でいじめの集ったクラスがあり、3学年だけ、全学級のクラス替えをやり直すことになったとニュースで流れました。
それらのニュースはたまたま起きた氷山の一角ではなくどの学校でも起りうる事態にあると思うのです。今、中高一貫校から有名大学へという受験競争は当り前になり、そのために、小学校からの塾通いの子どもたち。学校へ行けば成績を気にして、また、学校では小学校も中学校も守らなければならないたくさんの約束ごとがあります。その中でストレスを感じている子どもたち。いじめはどの学校にもあり、また先生には分からないところで進んでいるようにも思います。そんな中で、なんとかしなくてはと親の期待を背負っている子どもたちがいます。いじめは、なくなるどころか、今増加傾向にあるのです。
そんな下を向きたくなるような状況の中で、「風に立つ」柚月裕子著の本に出会いました。この本を読みながら、下なんか向かなくてもいいと勇気をもらいました。是非読んでみてください。その内容を少し紹介します。
主人公は中3になる春斗と苦労に苦労を重ねて弁護士になった父親の達也と母親の縁の3人家族。父親は厳しく、春斗に勉強を積み重ねることが大切と、小さいときから塾に通わせ母親も父に賛同している教育家族の中で育って春斗も疑うこともなく勉強を頑張っていたのですが、そんな塾通い。中学校に入ってから疑問を感じるようになっていました。そんなある日塾に遅れそうになり、近くにある自転車を盗んで塾に行き見つかって補導されることになり、家庭裁判所で補導委託として、南部鉄器を製造している「清嘉(きよか)」の親方に預けられることになるところから始まります。住込みとして南部鉄器を造くる手伝いをする中で春斗は変っていくのですが父親はその補導委託にあたって春斗に条件をつけていたのです。それは、塾の課題を毎日やり、週末に自宅に郵送することを条件に訶可したのです。父親は勉強を続けることが将来必要になる、子どものためだと強く思っていたのです。母親も初めのうちは賛同していたのです。そして春斗は南部鉄器を造っている職人との交流を重ねる中で自分をとりもどしていき塾の課題の郵送もやめ、自分のやりたいことを見つけていきます。それは動物(馬)と触れ合う仕事をする ということです。そして頑固に勉強が大切で欠かせないとしていた父親の心を動かしていくという物語です。風に立ち向っていくをま春斗わりで支えていく人たちとの交流を読んでみてください。私はこの本を読みながら、春斗の思いは、誰でもが持っている思いだと考えています。受験競争で勝つことが幸せにつながるというのは、短絡に過ぎると思っています。子どもも自分の可能性を信じ自分のやりたいことをやっていくことは輝きがあると思っています。それは親の願いでもあると思っています。子どもは無限の可能性を持っていることを信じたいと思いました。親にも思いがあるのですが、子どもにも子どもの思いがあるのです。その思いを大切にすることが親だと思うのです。まかされたら、子どもは自分でちゃんと考えていくと信じていいのです。最後になりますが、この原稿を書いているとき、不登校新聞が届きました。その一面にひかりんちょさん(タレント、インフルエサーで、10代の若者からたくさんの相談が寄せられる 現20才)のお話があったので抜粋します。ひかりんちょさんは、中2~中3で不登校だったそうです。そして、その当時のことをふり返ってみて、本当によかったと思うのは、お母さんと腹を割って話せたことですと。本気で殴り合って、気持ちをぶつけ合えたのは大事なことでしたと。分かり合えるようになってから、『ひいちゃんのやりたいようにやったらいいよ』って、お母さんは一貫して、私の味方でいてくれましたと・・・・・そして「あなたの味方だよ」と。『あなたのためだよ』は違うよ。「あなたの味方」は、あなたを尊重するということで『あなのため』には、大人の側の上から目線や自己満足が入っている気がします。「あなたのため」と言いながら「こうしなさい」「自分だったらこうするよ」と押しつけてきます。子どもは、大人が味方でいてくれているのが、自己満足で言っていることを敏感に感じとっていると語っています。
私もひかりんちょさんと同じように思っています。どんなに「あなたのため」と言ってもその言葉は子どもには届いていないのです。自分の自己満足でしかないと、子どもは見抜く力と感性を持っていると思っています。そして、親が本当に自分の味方だよと感じたら、子どもは、自分の力で自分のやりたいことをできるようになるのです。それは、春斗さんも同じです。その姿を見て、あんなに頑固だった父親が春斗がやってみたいならやってもいいよと変わるのです。
“あなたはあなたのままで大丈夫”と信じること大切さに思いを馳ました。
2024.4.17 竹内春雄
この情報は、「不登校を考える親の会 川崎の会」により登録されました。