『 ふ-この独り善がり日誌 』5
薬効き
刺し子一針
霜夜かな
年を重ねるとどうしても転倒しやすい体になってしまう。転倒することは大きなケガ、事故に繋がりかねない。PD患者であれば尚更のこと。私は、大腿骨骨折で寝たきりになった義母の介護の経験から強くそう思うようになった。常日頃、「転べば骨折、転べば骨折・・・」と自分に言い聞かせる。多少は意識が向くため効果があるように思う。ところで、私達夫婦はPDの患者である。診断されたのは私のほうが夫より二年近く早かった。それなのに、夫の病状は私を追い越し介護認定、障害者手帳の配布その他、医療、介護保険の利用上の手続き等夫を取り巻く周辺の状況は、目まぐるしく、忙しく変化していった。
介護をする立場になった私は同じ難病を抱えた者同士として分かり合えるところもあるのでは?とプラスの方向に考えるようにした。ところが現実は厳しい。
夫の最も顕著なPDの症状は転倒である。すくみ足やふらつく上半身のため、何かにつかまらないと歩けない程悪い症状がある。転倒場所は大体決まっている。台所、冷蔵庫付近が多い。日に2回から3回は下らない。日常の生活音には無い大きい衝撃的な音が家中響く。転倒すると直ぐに分かる。駆け寄って声をかけると、少しバツがわるそうにして何とか起き上がろうともがいている。体重80キロ、長身の体を起こすのは大変だ。私の役割は、支えになりそうなイス等引き寄せて渡すことだ。何とか自分で起き上がる。
今までに棚に額を打ち付けて出血し、救急車で搬送されたことや台所のドア、外側の窓ガラス、食器棚のガラス破損等で修理代の出費もかさんでしまった。
また、外出した際に数回2人で転倒して交通事故に遭いそうになったり、スーパーのエスカレーターから転げ落ちそうになったりした。転んで動けない夫を見かねて車椅子を貸して下さった方や夫の体を支えて自宅まで連れて来て下さった方等、人のあたたかい気持ちに触れて前向きに考えるようにした。
最近も夫の転倒は続いている。でも一つだけ変わったことを発見した。
柔道の受け身のような技を習得したかのように上手くゆっくりと転ぶのである。私の目の前で起きたのでお互い目が合った。そして何となくおかしくなって二人で笑ってしまった。
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