「四日市公害と環境未来館」視察
詳細
川崎市と同様、工業都市として知らる三重県四日市市。昨年騒がれた東芝メモリの最先端工場も、ここ四日市市に立地しています。かつて深刻なぜんそく公害を経験したことも、川崎市と同じですね。
この四日市市のど真ん中、近鉄四日市駅から歩いて数分の一等地に、2015年3月に開館した「四日市公害と環境未来館」(以下、当館)。それから3年半経ってしまいましたが、2018年9月に、現地視察に伺いました。
http://www.city.yokkaichi.mie.jp/~yk-ykkn/
当館は、四日市公害の歴史と教訓を次世代に伝え、環境改善・都市と環境が調和するまちづくりを進め、未来に豊かな環境を引き継ぐために開館したとのこと。実際に現地を訪れ、スタッフの方からの説明をうかがい、当館が「環境先進都市」を名乗る都市に欠かせない場所になっている様子を実感してきました。
上階は博物館になっており、リアルな再現模型で四日市市の歴史をたどってゆきます。
ここは川崎と同様、かつては宿場町として栄えた四日市宿の様子が等身大模型で再現されています。
展示は博物館からの続きのように見えますが、「四日市公害と環境未来館」に入りました。
「高度経済成長期のくらし」
1961年の市内の団地の一室を再現した展示。家庭ではプラスチックなどの石油製品が増え、「三種の神器」が持て囃された時代。
展示にはありませんが、右脇のパネルでは「車社会の到来」も伝えています。
「高度経済成長」期に普及した自動車や石油製品と表裏一体の関係にあるのが、大気汚染公害。
昭和生まれの私たち視察者にとっては当たり前のこと、かつて経験したこと、今なお経験していることですが、いまや平成生まれの人が満30歳を迎え、現場の最前線に立っている時代。ましてや、これからを担う若い世代には、馴染みの薄い出来事かもしれません。
展示では、ここ四日市市で起きたことを、図解で具体的かつ簡潔に解説しています。
詳しく知りたい人は、手前の引き出しを引き出すことで、詳しい解説や資料を見ることができます。
四日市公害の歴史
壁一面に続く年表。企業名などは実名で掲載されています。
公害を経験した人たちの体験談を収めた映像資料が保存され、自由に視聴できます。
ここには、被害者だけでなく、加害側の企業の担当者のメッセージも多く収録されています。
当時現役だった世代は、すでに高齢になっていることや、健在の方も辛い記憶を思い出したくないといったことから、なかなか出てきてもらえないそうです。そうした中で、あえて辛い記憶を語ってくださった貴重な証言。この収録・保存も重要な取り組みだと思います。
なお、一部のビデオはホームページでも見ることができます。
http://www.city.yokkaichi.mie.jp/~yk-ykkn/sp/
「企業の取り組み」
公害に直面した企業がどう取り組んできたかが紹介されています。
意外と思われるかもしれませんが、地元企業は当館を従業員研修の場に活用するなど、当館は企業に歓迎されているそうです。
同様の取り組みは、JR東日本が川崎駅構内の事故車実物などを展示する「事故の歴史展示館」を研修センター内に設けている事例もありますが、
https://www.jreast.co.jp/press/2018/20181002.pdf
過去から学ぶ従業員研修は、将来を担う人材育成に欠かせない取り組みであり、その一端を担うことは、工業都市・環境先進都市および先進企業に欠かせない取り組みだということです。
公害は過去のこと、後ろ向きなことと考える人もいるかもしれませんが、現地を訪れて感じたことは、むしろ過去の経験から学び、よりよい将来をつくるための未来志向の場所だということ。
昭和が終わって30年、平成も終わろうとしている今の時代に、将来を担う人材育成の場を街の中心に据えた四日市市の先見性を窺い知ることができました。
「四日市公害と環境未来館」は近鉄四日市駅から歩いて数分、市内随一の繁華街の中にあります。常設展は予約不要・見学無料ですので、近くへ出かける機会がありましたら、気軽に立ち寄ってみてください。
http://www.city.yokkaichi.mie.jp/~yk-ykkn/
また、こうした「公害資料館」が川崎市にも必要と訴える取り組みを行っている方々がいます。署名募集中のようですので、関心がありましたら E-mail: kawasakifuture★gmail.com(担当・三枝さん、★を@に変えてメール送信)で問い合わせてみてください。
この情報は、「持続可能な地域交通を考える会 (SLTc)」により登録されました。