【コラム】2024年10月 子どもを信じて
公開日:2024年10月06日 最終更新日:2024年10月07日
2024年10月の竹内先生のコラム(お手紙)です。自筆を大切にしたいので、ファイルを張り付けています。
----- 以下テキスト版-------
子どもを信じて
今回は絵本作家のまつおかりかこさんのお話からはじめます。(#with you. 朝日の記事から)
まつおかさんは受験して第一志望だった中高一貫校の女子校に入学したのですが「友達ってどう作るんだっけ?」と急に分からなくて焦りました。楽しいと感じない場面でも、みんな一緒になって楽しいふり、無理して笑ったり、周りに合せたりして.........そして、5月のある日突然布団から起き上がれなくなり、その後3年間不登校になりました。「なんで学校へ行けないんだ。」「このまま大人になったらどうなるんだ。」と「自分を責め続け、自分に殺されるような感覚になり、それが一番苦しく、つらかったです」と語っています。でも、幼いころから絵を描くことが好きで、学校へ行けないときはよくイラストを描いていました。独学でイラストを描き、ウェブサイトを作り熱中している時が苦しさを忘れる唯一の楽しみでした。小さい頃から父が「好きなことは宝物だから大事にしなさい」という言葉が私の支えになっていましたとまつおかさんは話しています。そして高校は通信制にも切り替えられる学校へ行き、遅刻や欠席もリポートで替え、行けないときも、大丈夫という逃げ道があり、安 心でした。そして、好きなことなら頑張れそうと、イラストや絵本の関連の仕事がしたいと美大に進学。卒業後の個展をきっかけに絵本作家デビューしたそうです。そして、まつおかさんは、私の両親がしてくれたように、親は子どもが安心できるまでの間見守りながら、本人がどうしたいのか、耳を傾け、好きなことがあれば、それを伸し、サポートできたらいいなと語っています。 そして、子どもに向けて『自分に合う場所を探してほしい』『自分の好きなことは、どんなことがあっても、大事にしてほしい』と思っていますとも語っています。そう言えば、私の知っているシンガーソングライターの風見隠香さんも同じような体験をしています。子どもの頃から歌が大好きな子どもだったのですが、人前では絶対に歌えない子で、不登校になったときも、家ではいつも大きな声で歌えるのですが人前では声がでなかったのです。そして、不登校になったときも、親は学校へ行きなさいと風見さんを責めないで、楽しく歌う姿を応援してくれたそうです。風見さんは、どうしてもみんなの前で歌いたいと思い続け、誰もいない真夜中の道路だったら歌えるかもと考えました。今はシンガーソンタライターとして皆の前で公演活動をしています。それも、子どもの頃から励ましてくれる母親がいたからこそです。今、公演がないときはお母さんと一緒喫茶店をやっています。
自分は自分でいいんだよ。人と比べなくたっていいんだ。自分は自分であって大丈夫。好きなことをやっていいんだよ。一人ひとりちがっていいんだよ。人と比べなくても。好きなことをやっていいんだよ。安心できたら、子どもはきっと前に進めるんだと思っています。
そんなことを思っていたとき、「教育虐待」という聞きなれない言葉の記事が目に入りました。(2024年 9.5の朝日の記事)限度を超えて親が子どもに勉強を強制することを「教育虐待」というのです。時に暴力や暴言を伴い、子どもの心身を深く傷つけることだとしています。
銀行員の父親は小さいころから絵本を読み聞かせるどこにでもいる普通の父親だったのですが、いつものように本を読み聞かせていた時、長女はその本をまるごと暗記する記憶力に気づき、よし県でも一番良い学校へと期待を持つようになり、教育パパになったようです。そして、週7日塾、ピアノ、水泳、書道と通わせ、日々疲れる長女、気になる長女の態度に父の機嫌が悪くなり、夜中に起されて、殴られることも。そして父親の顔色をうかがう「優等生」を演じた。中学校では学級委員長に立候補し、合唱コンクールの指揮者に、でも成績は伸び悩み父の望んだ第一希望校には行けず、第3希望の私立高校へ入学した。学校近くの祖父の家に住み、学校での人間関係に悩んで実家に電話をかけても、父は「いちいち電話してくるな」と期待に応えられない自分は捨てられたと感じ、ストレスで過食と食べて吐く日が日常になったと。でも卒業して大学へそして卒業後、結婚し、二女の母親になるも、二女は中学校受験に失敗、公立中学校へ行くも、不登校になり、自室でリストカットする次女に気づき、私も父と同じことをしていたことに気づき、次女に寄り添うようになったという記事です。
どの親も子どもは幸せになってほしいと思っています。でも親の思う幸せと子どもが思う幸せとは違っているのは当り前えだと思うのです。一人ひとり違う人間なのですから。親が子どもに「好きなことは宝物だから大事にしなさい。」という言葉は「あなたの思いを大切にするよ」安心して自分のやりたいこと見つけていいよ。自分のことは自分で決めていいんだというメッセージが伝わってきます。そして、まつおかさんは自分の好きなことを続け、絵本作家になりました。
子どもはオギャーとこの世に生まれた瞬間から自分の意志を持っている一人の人間として尊重される存在だと思うのです。そして、みんな天才として生まれてくるのです。私もそう思っています。赤ちゃんは誰におそわることもなく、自分で必要な技を身に付けていくのです。「まねぶ」から始まり、見よう見まねで、いろいろなことを覚え学んでいきます。3才ぐらいまでには生活に必要なことは自分で身につけていきます。そこには幼児教育として外側からの指導は必要ないと思っています。子どもに必要なのは安心して好きなことを好きなだけできるという環境です。そこから学んで自分の物にしていく時代なのです。それは基本的に小学校、中学校へ行っても同じだと思っています。2番目の事例のように親が線路をひいて、この道を行けばきっと幸せになれると思っても、それは親の思いであって、子どもの思いとはずれています。そして、自分が親になって、自分が親にされてきたことを自分も自分の子どもにしていたことを子どもから教えられ、自分のやっていたことは自分の父親と同じことしていたのだと気づき、子どもに寄り添うことに気づいたというお話は「よかった」と思いました。いろいろな出来事のなかで自分のものさしてで子どもを見るのではなく、子どもの側に立って考え、共感できることの大切さと、子どもの味方になることで、子どもは安心して「よしガンバッテみよう」と思えるのです。そして、自分のやりたいことは自分で決めていいのです。子どもは誰でもその力を持っているのです。子どもが迷って悩んでいるときこそ、子どもを信じ、応援すれば子どもは安心して、自分のやりたいことをやっていけると思うのです。どの子もその力を持っています。
2024年10月1日 竹内春雄