知的障害者理解のための研修会「知的・発達障害疑似体験」
令和6年9月4日(水)、川崎市総合自治会館にて、知的障害者理解のための研修会『知的・発達障害疑似体験』を開催しました。講師は全国手をつなぐ育成会啓発キャラバン隊WEB推進委員会リーダー、兵庫県たつの市市民啓発隊「ぴーす&ピース」の矢野一隆氏です。参加者は46名。当会会員以外にも、市内支援学校保護者や支援員の方々が多く足を運んでくださいました。
講師 矢野 一隆氏
開始前、ご本人は「緊張してドキドキする〜」とおっしゃっていましたが、研修会が始まると関西弁の大変滑らかな語り口調で、次々と笑いをとるところはさすがです。研修会の中では、5つのプログラムを紹介・実演してくださいました。
開会の挨拶 美和会長
描いてみよう
『描いてみよう』は「りんご」「ボール」「ちょっと」「ちゃんと」を描いてみようというものです。りんごやボールを描くことは比較的容易ですが、「ちょっと」や「ちゃんと」という言葉は抽象的で形として想像しにくく、参加者は頭を悩ませていました。私たちは普段無意識に使っている言葉ですが、知的障害のある人にとっては、あいまいで伝わりにくい表現であることが説明されました。「絵に描きにくい言葉は伝わりにくい」そうです。
何を写した写真でしょう?
『これなあに』は、1枚の写真を数秒間見て「何を写している写真か?」を参加者に尋ねました。人により視点の違いがあることを学ぶプログラムです。知的障害者の中には、自分が興味あるものしか見えない人たちが多くいます。その人たちは情報過多になると混乱してしまうので、いらないものを隠してあげるといった配慮や工夫が必要であることを学びました。
数秒間で四角形の数を数えます
『数えてみよう』は、様々な図形が描かれているモニターを見て、数秒間でその中に四角形がいくつあったかを数えます。その後「青い三角形はいくつあったか?」と問われ、非常に戸惑いました。四角形を数える過程で絶対青い三角形も見ているはずなのに、意識していないと見過ごしてしまいます。これは、1つのことに集中すると他が見えなくなるという「シングルフォーカス」を体験するものでした。
これら3つは、当会かわさきキャラバン隊でも実施しているお馴染みのプログラムでしたが、他に『とんとんすりすり』『じゃんけんしてみよう』という参加型のプログラムがありました。
『とんとんすりすり』は、グーの右手で右足を叩きながら、パーの左手で左足をすりすりというものです。これだけであれば簡単なのですが、矢野さんの合図で左右の動きを替えるという課題には混乱しました。2つのことを同時にやるのは難しいということを体験させるものでしたが、他にも話をしながらメモをとることや、縄跳びや自転車の動きもこれに当たるそうです。しかし、慣れると徐々にできるようになることも多く、知的障害者には、できるようになるため工夫と見守りが必要であることを学びました。
皆さん、画面にくぎ付けです
『じゃんけんしてみよう』は、前のモニター画面とじゃんけんをするというもの。後出しで良いということだったので、テンポが早まっても勝つ方は比較的ついていけるのですが、「負けてください」と急に言われると混乱してしまいました。理由は「じゃんけんは勝つものと頭に刷り込まれているので、負けることはやり慣れていないため」です。知的障害者は情報処理に時間が掛かってしまうので、急かされると焦ってできません。『落ち着いてゆっくりやればできるので、急かさず待ってあげてください』ということを伝えるプログラムでした。
既にかわさきキャラバン隊でやっているプログラムでも、矢野さんの伝え方は表現がわかりやすく、ストンと心に入ってきました。また、参加型プログラムでは、会場は大いに盛り上がり、参加者の心をガッチリ掴んでいました。参加者アンケートでも、「大変勉強になった」「今後に生かしたい」「楽しかった」「また教えてほしい」などの感想が寄せられました。
当会がキャラバン隊を始めたきっかけは、矢野さんの「ぴーす&ピース」講演を見たことでした。「かわさきキャラバン隊」も、“親”の背中を見てこれからも良い講演ができるよう精進していきたいと思います。そして、知的・発達障害疑似体験を通して、障害者への理解がさらに進むことを願ってやみません。
*「みんなちがって、みんないい」そんなお互いを認め合える共生社会になることを目的として、かわさきキャラバン隊を結成しました。知的・発達障害疑似体験を通して、知的障害がある人の気持ちを理解していただき、どのような支援が必要なのかを考えるきっかけを作れたらと思っています。
この情報は、「川崎市育成会手をむすぶ親の会」により登録されました。