川崎公害の根絶をもとめて---5.最近の、機関紙のニュ-スから
詳細
① 激増する、市民の呼吸器疾患による死亡!
2010年7月号
川崎市統計書に掲載されている、死亡統計のうち市民の呼吸器疾患による死亡について調べてみました。すると、慢性気管支炎や肺気腫といった慢性閉塞性肺疾患が2005年以降急増していること、また気管・気管支・肺による悪性新生物の死亡者も増加していることがわかりました。原因は、すべて大気汚染ではないにしても、主要な原因の一つであることは過去および現在の汚染の状況から判断できます。
表-1 市内の、ぜんそくと慢性閉塞性肺疾患による死亡者数の 推移 (人)
(年)00 01 02 03 04 05 06 07 08
喘息 27 37 26 21 20 28 23 21 17
閉塞肺 127 134 107 131 93 117 131 145 158
表-2 悪性新生物(気管・気管支・肺)の死亡者数 (人)(年) 1968 1978 1988 1998 2008
男 39 93 189 274 371
女 17 34 61 100 152
合計 56 127 250 374 523
② 2年連続して、二酸化硫黄の1時間値オ-バ-
2010年1月号
燃料の転換や脱硫装置の設置により、二酸化硫黄による公害は全体として改善されています。しかし、環境基準のうち1時間値の0.1ppmを超えることがわずかですが、いまだに発生していることはあまり知られていません。川崎市公害監視センタ-の資料によると、田島測定局で2008年9月13日に1回、また昨年2009年は大師測定局で、5月12日と8月12日に各1回ずつ発生。その時の風向は、田島局は東風で大師局は南・南南東でした。以前、三宅島噴火による影響がありましたが、今度の場合は川崎市も人為的な原因であることを認めています。
③ 窒素酸化物および二酸化炭 素の排出量、市内事業所上 位10者
2011年1月号
川崎市内の事業所のうち、どこが大量に出しているのか、市から資料を取り寄せ、上位の10者について抜き出してみました。下のように、一番多かったのはいずれもJFEスチ-ル(旧日本鋼管)で、次が窒素酸化物は東燃化学、二酸化炭素は東電東扇島でした。以下、石油化学やセメントなどの産業が続いています。
私たちは、地球温暖化の主たる原因物質の、二酸化炭素も広く公害と捉えています。
大気汚染公害も温暖化も、これら大手工場・事業所の削減がなされなければ解決しません。
A.窒素酸化物
(09年度、トン)
第1位 JFEスチ-ル
2,534
第2位 東燃化学 1,023
第3位 東燃ゼネラル 823
第4位 JX日鉱日石浮島
618
第5位 東電川崎 581
第6位 JR川崎火力 569
第7位 ディシィ 545
第8位 東電東扇島 430
第9位 東亜石油扇島 405
第10位 東亜石油水島360
B.二酸化炭素
(08年度、千トン)
第1位 JFEスチ-ル
8,710
第2位 東電東扇島4,020
第3位 東電川崎 2,910第4位 東燃ゼネ石川崎
1,713
第5位 川崎天然ガス
1,210
第6位 新日本石油川崎
1,150
第7位 昭和電工川崎
1,092
第8位 東燃化学 1,014
第9位 東亜石油京浜 983
第10 ディシィ 714
*JR川崎火力は含まず
市内放射能濃度の、電光表示を!
2011年4月号
3月11日の東日本大地震と大津波によって、東電福島第一原発が爆発事故を起こし、いまも放射能が排出されています。川崎市は、ただちに川崎区田島で放射能の測定を開始し、市のホ-ムペイジで公開しました。
しかし、東京都などは都庁ロビ-はもちろん、渋谷や新宿などの街頭でも公衆に広く電光表示していることから、なくす会は4月8日、市に市役所前の大気汚染電光表示板でも公表するよう、緊急の申し入れを行いました。なお、同電光表示板が、震災後「節電」を理由に休止していることについて、市民の健康にかかわる重大問題であるとして、ただちに元に戻すよう要請しました。
(写真は、「節電中」と表示され休止している川崎市役所前の電光表示板)
県内の窒素酸化物測定器を点検
2011年4月号
行政による二酸化窒素等の測定法は、従来の湿式(吸光光度法)から乾式(化学発光法)に替ってきています。乾式は、吸収液の処理が省けるなどの利点があると言われています。しかし問題は、測定法が替っても測定値の「一致性」が確保されるかどうかです。
近年、公害対策や景気の後退等により二酸化窒素等の濃度が低下してきています。このこととは別に、乾式による測定値は低く出る傾向があると言われるようになりました。
そこで、なくす会は先ごろ県内の自治体の各測定局における測定法変更に伴う測定値の「一致性」について、具体的には並行試験実施の有無とその結果について調査しました。一致性の評価については、国の方から一応の目安が示されているのですが、それによるとあくまで限られた資料の判断ですが、川崎市の測定機は合格、神奈川県の一部のついては不合格なものが見つかりました。
写真は、県の2006年度分の一例です。上の伊勢原市役所局は合格、下の座間市役所局は不合格となっています。
どこの測定局も、またいつでも、精確な測定と「一致性」が求められることは言うまでもありません。
普陀山(観音浄土)の大気の汚れについて 2011年7月号
今年6月、中国浙江省へ旅行してきました。各地で、二酸化窒素の測定を行ない、結果は次の通りでした。もちろん、たった一日の測定で、それがその都市を代表するものでありません。
それらのうち、日本でかつて盛んだった「ふだらく渡海信仰」の本場-普陀山における測定結果が注目されました。2日間とも、日平均値0.004ppmと、国の環境基準並びに市の環境目標値(同0.02ppm)を下回る、大変清浄な大気でした。まさしく、観音浄土の地にふさわしいものと思いました。(神戸)
測定結果:
紹興 5/28 0.032
寧波 5/29 0.050
普陀山 5/30 0.004
5/31 0.004
杭州 6/1 0.030
川崎公害展を開催
2011年10月号
なくす会は、本年8月3日から9月16日まで、麻生区にある川崎市ア-トセンタ-で「今なお続く大気汚染-川崎公害展
」を開催しました。この企画は、四日市公害を取り上げた映画「青空どろぼう」の川崎上映に協力する形で実現したものです。
内容は、大気汚染等公害の実態や主な運動、温暖化・放射能汚染など3分野について、写真やグラフ・絵画・作文など81点を数え、期間中映画や演劇を見に来た人、お茶でくつろぐ人たちなど多くの人の目に触れてもらうことができました。(略)また、期間中の9月4日には、映画上映の後、公害患者も加わってもらい、ト-クショ
-を行いました。これらの感想として、「経済発展の陰に、犠牲になった人がいるとは知らなかった」「四日市と川崎の関係が良くわかった」「今度の福島も、みんな同じ構造が作り出しているように思える」などが出されていました。
◎市内トップはJFEスチ-ル
-2010年度の窒素酸化物排出量
2012年1月号
市内大企業から排出される、窒素酸化物は年々減少していますが、まだ大量にでています。
市環境局の、最近のデ-タから見てみると、全体で8,583トン(年間)。このうち、圧倒的に多いのは鉄鋼大手のJFEスチ-ルの2,752トンで、全体の約3割りを占めていました。次に多かったのが東燃化学、そして東京電力の順でした。以下に、ベストテンわ示します。(トン、四捨五入、なお東電・日石・昭電・東石は各工場の合計)
第1位 JFEスチ-ル 2,752
第2位 東燃化学 1,026
第3位 東京電力 970
第4位 東燃ゼネラル石油 872
第5位 JX日鉱日石 739
第6位 東亜石油 725
第7位 JR川崎火力 489
第8位 ディ・シィ 391
第9位 旭化成ケミカルズ 150
第10位 昭和電工 139
◎PM2.5速報値の公表を
-なくす会が申し入れ
09年9月に、微小粒子状物質(PM2.5)についても環境基準が定められました。いま、各地で測定体制の整備が進められていますが、それと同時に測定結果の市民への早急な工法が求められています。こうした中、なくす会は昨年11月28日、川崎市環境局へ次の3点を申し入れました。①市役所前電光表示盤に測定結果を表示する②公害監視センタ-のホ-ムペ-ジに、早急に載せる ③大気汚染濃度電光表示盤の増設する
その後、市からなくす会に「速報値の掲載は、少し時間を頂きたい。その間、月例のホ-ムペ-ジ更新の際掲載できるよう工夫する」と回答してきました。
大気汚染対策と温暖化防止に逆行-東電川崎火力
2012年4月号
「安全神話から」原発事故を起こした東電。その東電が今度は川崎の地で、大気汚染と温暖化を拡大しようとしています。
先日市民に縦覧した、環境影響評価準備書によると、川崎火力(川崎区千鳥町)は目下300万KWの火力発電所を建設地雄ですが、まだ完成もしていないのにさらに342万KWへと規模を拡大、その結果二酸化窒素の排出量は、計画値で年間1,190トンから1,440トンに増加、また二酸化炭素についても将来約730万トン/年に増やすことになるとしています。
現状でも、被害者が増えているのに、今以上に公害をだすことは決して見逃すことのできない問題です。皆さんも、ぜひこのことを考え行動に参加してみてください。5月19日は神奈川県、翌20日には市の主催する公聴会が開催される予定です
。
気管支喘息患者数、ついに2万人を超える!
2012年10月号
川崎市内で、気管支喘息と診断された患者数がついに2万人を突破したことが分かりました。市が委託した、2011年度医師会調査によると、全市の患者数は20,499人と過去最高だった前年度の18,706人よりも、1,799人超過し記録を更新しました。
区別に見ると、最も多いのが川崎区で4,556人、続いて宮前区の3,781人、多摩区の3,316人などとなっています。区ごとの人口に占める割合-人口千人対でも、川崎区がトップでした。(なお、調査用紙の回収率が増えています)。
市役所前の電光表示盤を撤去!
2013年4月号
革新市政誕生後の1971年4月、市役所本庁舎前に設置され、通行人や市民に大気汚染濃度を知らせてきた電光表示盤が、本年イチ1月中旬、公害監視センターの殿町への移転を理由に撤去されました。
これまで、PM2.5の表示などを求めるなくす会との話し合いの中で、市は表示盤の継続には多額の費用が必要で改修は困難としていました。その代わり、新規に第三庁舎内におけるテレビモニターの設置やテレビ神奈川によるデータ放送(3月)を行うことを明らかにしていました。
なくす会が、緊急の申し入れ
こうした中、なくす会は2月5日、常時吸っている大気汚染表示は、屋内だけでなく屋外で市民や住民
に知らせることが必要として、
①早く市内各区庁舎や主要駅等・繁華街などに大型ビジョン等を設置する
②新たにpm2.5や放射線量の表示を加える
③光化学スモッグ発生・気温・風速も表示する などについて申し入れしました。
屋外で表示することについては、同月26日、環境総合研究所視察の際にも要望しました。
これは“生命の問題だ”
市はサン3月下旬、説明のとうり第3庁舎1階にテレビモニターを設置しました。ところが、設置された場所はすぐには見つけられない守衛室横の通路で、表示内容も市ホームペ-ジと同じ数字の羅列。どうも当局には、屋外表示盤が、公害被害者や住民の生命・健康に関わる問題であることが分かっていないようです。
成人ぜん息医療費助成制度の見直し---市長が市議会本会議で答弁
2014年10月号
本年6月24日の本会議で、福田市長が「今後の制度の在り方について検討してまいりたい」と発言しました。これは、多摩区選出・無所属の三宅議員の質問に対する答弁。市長は、都の制度と性格が異なり、ただちに連動するものではないと指摘するものの、同議員が国の疫学調査や喘息と大気汚染濃度に関連性が見られなかったとする、健康福祉局坂元技監の論文と書か連づけていることから、さらなる改悪を求めたものであることは確実です。
これに対し、公害患者会がつよく抗議、公開質問状を出すとともに、市役所前や中野島駅前などでビラまき宣伝を行いました。なくす会も、坂元技監の論文に対し会長名で7月29日「感想と意見」を取りまとめ提出しています。その内容の主な点は、次の通り。
①環境基準・環境目標値が、充分達成されていない ②健康被害は、個々の汚染だけでなく複合汚染として働いている ③喘息の発生は、汚染が継続して一定期間後に起こる ④川崎公害裁判の判決も、大気汚染と健康被害の関係を認めている ⑤NOxやSPM以外の大気汚染物質等との関係についても検討を進める
その後、度重なる公開質問に窮した三宅議員は、10月26日付けで「制度の廃止や縮小を求めたことはなく・・今後この制度の存続を願っている」等と伝えてきています。
公害防止対策への要望、44%に上昇! 市民アンケ-ト
2016年7月号
川崎市総務局が、毎年実施している平成27年度の「かわさき市民アンケ-ト」によると、市政への要望のうち、大気汚染や騒音・振動などの公害防止対策への要望が、最近上昇傾向にあり昨年は43.5%になりました。
過去10年間の回答率を調べたところ、40%台への上昇は実に8年ぶりでになっています。公害は決してなくなっていないこと、企業や行政の一層の努力が求められていることを示しています。
*画像が、不鮮明と思われますので、次に再表記しておきます。
2006年度 41.7%
2007年度 43.6%
2008年度 36.9&
2009年度 36.2%
2010年度 32.6%
2011年度 33.3%
2012年度 31.9%
2013年度 37.1%
2014年度 38.4%
2015年度 43.5%
市内では、いまも強い酸性雨が降り注いでいます!
2016年7月号
最近では、人々の関心が薄らいでいますが、大気汚染が改善されていない中、市内では今もpH5.6以下の酸性雨が降っています。市が観測しているデ-タをみると、年度平均でpH4.5から5.0の範囲内で、横ばいに推移し改善されていません。
特に問題なのは、降り始めの雨(初期降雨)の場合、ときどき今もpH3レベルの雨が降っていることで、昔なら大騒ぎしていたところです。
①年度のpHの推移
川崎区 麻生区
2004年度 4.7 4.6
2005年度 4.7 4.5
2006年度 4.9 4.7
2007年度 5.0 4.6
2008年度 4.7 4.5
2009年度 4.8 4.7
2010年度 4.9 4.7
2011年度 4.6 4.6
2012年度 4.5 4.6
2013年度 4.5 4.6
2014年度 4.8 4.7
②降り始めの、pHレペル別雨の回 数 (2015年の1年間調べ)
川崎区 麻生区
pH3.0~3.9 1 11
pH4.0~4.9 44 49
pH5.0~5.9 21 21
pH6.0~6.9 9 4
pH7.0以上 2 0
なお観測場所は、川崎区は田島町の公害研究所(但し2013年1月から環境総合研究所)、麻生区は百合丘の一般大気測定局です。
(画像は中原区にある平和会館前)
JR川崎駅東口の大型ビジョン
『公害克服』の工場夜景宣伝、取り止め
2016年10月号
“企業や行政などが協力して公害を克服”“煙突から排出されているのは、ばい煙でなく水蒸気”等と、これまで工場夜景観光に便乗して進められてきた『公害克服』の大宣伝が7月15日をもって取り止めになりました。これは、7月4日に開催された「公害団体と川崎市との連絡会」の場で、住民側から問題提起され市側もこれをみとめ実施された措置です。
実態に反するこの宣伝に対しては、なくす会も事あるごとに指摘してきました。
【臨海部の汚染が、多摩区まで】
近年、市の北部でぜん息患者が増加していることに対し、この間なくす会は宮前区や麻生区で大気汚染とぜん息との関連性について調査研究してきました。今年度は、多摩区でこれを進めていますが丘陵による影響として、高台よりも低地の方が汚染が高く被害者も多いことなどが分かってきました--後日、全体の調査結果発表。
また今回の調査では、多摩区内の汚染は自動車だけでなく、市南部の工場地帯からの汚染が到達している可能性も明らかになりまし
た。以下は、調査した8月3日の市の速報値等の資料でこれを証明しています。風向により、汚染気団が市南部から北部へと移動していることが分ります。
*数字はPM2.5(μg/m3)で、11時から14時の間の1時間値の最も高い数値。
11時/ 大師 21 ENE
田島 21 -
12時/ 川崎 17 SW
13時/ 幸 19 S
中原 17 S
14時/ 高津 15 SSE
宮前 16 SW
(なお、多摩区は市は測定していないが、なくす会の中野島1・2丁目における11:50~13:23の平均値では8.43μg/m3となっています)。
なくす会が、公害保健センタ-を視察
2017年7月号
さる5月24日、川崎区日進町にある「川崎横浜公害保健センタ-」を神戸会長ら数名で視察しました。同センタ-は、昭和49年11月の川崎市公害健康被害補償事業の一環として、その後横浜市と一緒に設立されたもので公害病認定患者の検診や保健福祉、大気汚染に係る健康被害予防事業などを行っています。
初めに杉本所長らの案内で、検査室やレントゲン室・肺機能室病歴室・図書室などを回り、夫々の部屋で説明を受けました。その後会議室で懇談、この中でなくす会から以下のような要望をしました。
①認定患者の健診業務だけでな く、もっと全市民を対象にした 健康予防事業についても実施し てもらいたい。
②市の医療救済条例のぜん息患者 への対策も進めてほしい。
③蓄積されている病歴等の活用を 図ったらどうか。
④市や住民・企業・議会が保有す る公害資料の保管する「資料 館」を造ることはできないか。⑤大学や大学病院などに呼びかけ て、最近の大気汚染と被害の調 査研究をやるべき。
【首都圏への黄砂の影響は?】
本年5月の7・8日、中国大陸からの黄砂が日本列島をすっぽり覆いました。そこで環境省のPM2.5についてのデ-タを使い調べてみました。
その結果、大陸に近い福岡市や福山市・高知市は8日に汚染がピ-クとなっており影響が明らかと思われました。次に、大阪市や名古屋市は12日にも同程度のピ-ク汚染があり、判然としませんでした。
また、川崎市の8日の汚染は12日頃よりわずかに高かったものの、断定しかねる状態でした。実際、気象庁のこの日の黄砂観測実況図では、首都圏は「観測なし」でした。
川崎区の発電所増設計画が廃止に
2017年10月号
川崎天然ガス発電(株)が、川崎区扇町で計画していた3・4号機増設計画について、同社は7月31日「廃止」を県や市に通知してきました。理由については「事業性の検討結果をふまえ」のことと多くを語っていませんが、一部新聞報道では送電費用が高くつくとか電力小売り他社との競争などを挙げています。環境アセスの手続きは、計画配慮書・方法書の段階を終え準備書の手前まで行っていました。この間、なくす会は意見書提出や審査会傍聴などを行ってきました。
増設により化石燃料を使用が増えることは、それだけ二酸化炭素や窒素酸化物がふえ、温暖化や大気汚染の原因となるものであり、住民・市民の立場からは歓迎されるものです。
・・・・・・・・・・・・・・・ 降雨量が多く、環境基準達成!
2017年10月号
川崎市は8月1日、昨年2016年度の大気汚染状況を発表、二酸化窒素のほか新たに微小粒子状物質(PM2.5)についても環境基準を全局達成したとしています。光化学オキシダントについては、依然全局で達成できていません。
特に、PM2.5の「達成」について私たちは次の見解を表明するものです。(1)測定している局数が窒素酸化物や浮遊粒子状物質のように18局でなく14局と少ない。(2)川崎区の市役所前自排局は、昨年8月の測定開始であったが、有効測定時間にわずか1週間足りなかった。仮に4月から測定していたら、直近の日進町自排局の測定傾向と対比してみて、基準超過していた可能性がある。(3)昨年は市も認めているように、夏の降雨量が例年に比べ特別に多かった。これが濃度を低くした原因の一つと考えられる。
ちなみに、なくす会が過去10年の6~8月の田島局の降雨量(平均)を調へたところ、2007年から2015年では最低79mm・最高172mmであったのに対し2016年は315mmと約2倍でした。
なお、PM2.5の大気中での滞留は雨粒を小さくし、集中豪雨の一因員となっているとの研究が最近報告されています。
初日の出と一緒に、PM2.5を測定しました!
2018年1月号
川崎では、今年も天気に恵まれ初日の出を拝むことが出来ました。ここ数年、多摩川河口近く羽田空港傍まで足を延ばしていましたが、今年はその手前の産業道路大師橋の上で迎え、それと同時にPM2.5の測定を実施しました。結果は次のとおり。
・時間 午前5時51分から5分間
・濃度 21μg/m3
・気温 3.6℃ ・湿度 65%
・平均風速 0.4m/s
元旦も初詣などの車により、一定濃度が記録されることになります。参考まで、その直後の京急川崎大師駅前では24μg/m3でした。
市内のぜん息患者数、過去最高を更新!
川崎市医師会の、平成28年度「気管支ぜんそく患者実態調査」によると、市内のぜん息患者は22,551人と過去最高になったことがわかりました。これは1990年の10,819人の2倍以上の数です。また、人口千人対では、同じく9.4人から15.1人とふえ年々増加していることが明らかになりました。
区別の患者数は次のとおりで、依然として川崎区が最も多い数になっています。注意すべきは、多摩区や麻生区などでも増えてきてい
ることです。
・・・・・・・・・・・・・・・
患者数 (人口千人対)
川崎区 4,837 (21.4)
幸区 2,226 (13.7)
中原区 2,792 (11.1)
高津区 2,765 (12.0)
宮前区 3,032 (13.3)
多摩区 3,516 (16.3)
麻生区 3,383 (19.2)
臨海部からの影響、春・夏に顕著
=田島はもちろん、高津でも=
2018年7月号
市が発行している、環境月報に載っているPM2.5月平均値を、春(5月)夏(7月)秋(10月)冬(1月)に分けて調査してみました。
その結果、南寄りの風が卓越する
春・夏は、北寄りの風が卓越する
秋・冬に比べて、川崎区の田島はもちろん、高津においても濃度が高いことが分りました。
これまでも、市南部の臨海部工場の汚染が南よりの風に乗って市北部に到達していることは、ある程度わかっていましたが、今回もそれが充分推測されることが明らかになりました。
(単位はμg/m3)
①2015年度
田島 高津
春・夏 16.2 16.4
秋・冬 14.1 14.1
②2016年度
田島 高津
春・夏 15.1 14.6
秋・冬 11.8 10.9
③2017年度
田島 高津
春・夏 15.6 11.9
秋・冬 11.2 10.8
「熱中症」も公害被害者か
=気温も救急搬送件数(率)も、最も高い区は川崎区=
2018年10月号
今年は、とりわけ猛暑日が続き「熱中症」により救急搬送された市民が多く続出しました。市消防局救急課によると、5月から9月末までの搬送者数は584人(速報値)にのぼり、昨年同期の294人より大幅に増えています。
そこで、特に多かった7月と8月について、人口10万人あたりの搬送者数、そして平均気温を調査したところ、区別では川崎区がいずれも第1位を占めていることが分りました。この傾向は昨年以前もほぼ同様でした。
ところで、「熱中症」については国も市もおおまかに地球温暖化との関連をみとめています。また本市の二酸化炭素など温室効果ガス排出量の約80%は、川崎区が排出源であることが知られています。そうなると、私たちは大気汚染をこれまで、なくす活動を進めてきた者として、
「熱中症」も公害被害者でないか
と考えざるをえません。実際、二酸化炭素が「公害物質」であると指摘する専門家は多くおり、アメリカ連邦裁判所が過去これを認めたこともあります。温暖化を公害対策として進めることも必要ではないでしょうか。
(資料-1)人口10万人当たり救急搬 送者数〔健康福祉局提供デ-タ より作成] 人
川崎区 55.3 宮前区 24.2
幸 区 38.3 多摩区 33.1
中原区 26.0 麻生区 27.4
高津区 35.4
(資料-2) 区別平均気温 〔環境 局デ-タより作成] 度
18/7月 18/8月
川崎区 29.0 29.0
幸 区 28.2 28.3
中原区 28.8 28.7
高津区 27.8 27.7
宮前区 28.6 28.5
多摩区 28.0 27.9
麻生区 28.2 28.5
(川崎区は田島)
*イラストは消防庁のもの
世界一高い煙突を誇った、
旧日立鉱山の公害対策等を視察
(2019年1月号)
昨年11月15日秋晴れの一日、なくす会のメンバ-5人で茨城県日立市を訪れ、わが国の公害の歴史で有名な旧日立鉱山が実施した公害対策などについて視察を行いました。
戦前の公害問題と云えば、足尾鉱毒事件が有名ですが公害野放しや農民を弾圧したのとは逆に、ここ日立鉱山では企業と農民が話し合いを重ね山林や農作物などの被害補償、粉じんや亜硫酸ガスを減らす対策を進めました。中でも、世界一と云われた高さ156mの煙突を建て、気象観測を12カ所で実施、被害が予想されるときは生産を減らすなどの措置が取られたと云います。煙害を防ぐため、当初は山稜に百足のように沿道を這わせたり、径の大きな煙突を建てるなどしたがいずれも失敗。高煙突は最後に満を持して建設されたもので、当時の社長の決断が大きかったとのこと。もちろん農民側の粘り強い反対運動があってのことでした。日立鉱山記念館では、こうした対策の詳しい話を聞くことが出来ました。
高煙突は残念ながら1993年2月、突然下部の3分の1を残して倒壊してしまいましたが、いまもリサイル工場の煙突として使われており、実際私たちが訪れた時もわずかながら煙を吐いていました。なお、鉱山の気象観測に係る遺産については、その後日立市に引き継がれ現在全国唯一の「天気相談所」として活用されるとともに、いま常時4名の気象予報士が交替で毎日2回の天気予報を出すなどしていました。今回の視察については、道順の案内や企業との橋渡しなどでシ教育委員会生涯学習課・百年塾サロンの皆さんの協力をいただきました。
(写真には、現在の煙突の姿(倒壊後の高煙突・見にくいが百足煙突・阿呆煙突と呼ばれた円筒形の煙突)が映っています)
大気汚染の取り組みの進捗・改善度は?
-市民の環境に関する意識調査から-
(2019年4月号)
「変わらない」がトップの43%
市環境審議会に、審議のための参考資料として、環境に関する意識調査の結果が提出されています。昨年9月にwebにより調査したもの。それによると、最も多かったのは「変わらない」の41.2%で、次いで「分からない」の31.2%、「改善した・取り組みが進捗した」は15.3%、「悪化した・取り組みが遅れている」は12.3%の順となっています。ややもすると、大気汚染は、改善したかどうかに関心が行きやすいですが、この調査では「変わらない」がトップを占めていました。大気汚染はつづいているということです。
*グラフは会で作成したものです。
=50周年記念の取り組み進む=
なくす会は、1969年5月に創設して本年5月で満50周年を迎えます。これまでに記念事業の一環として、茨城県にある旧日立鉱山の"高煙突"を視察したり、記念切手の発行。またいま記念碑の設置や活動報告書の発行、祝賀会(5/25)等の準備を進めています。
市内のぜん息患者数、過去最高に
-医師会調査で判明-
(2019年10月号)
2018年度の川崎市医師会調査よると、全市の気管支ぜん息患者数は22,659人と過去最高になったことが分りました。2011年に初めて2万人を超え、2016年に2万2千人台になっていました。
また、人口千人対の人数も14.9人と過去最高でした。原因は、もちろん一つと限りませんが、今も以前として、大気汚染が改善されていないことを示しています。
なお、区別で患者数が最も多かったのは、川崎区で4,828人でした。第2位は麻生区、続いて宮前区・多摩区・高津区・中原区・幸区の順でした。
市、公害団体推薦委員を外す-環境影響評価審議会
(2020年10月号)
川崎市は、このほど次期改選(本年12月)から、20人いる環境影響評価審議会の委員のうち団体推薦委員5人をはずす方針を決め、7月本会にもそれを伝えてきました。公害をなくす会は、昭和51年12月の審議会発足以来約20年間にわたり、発電所や幹線道路・物流センタ-・リサイクル施設・住宅建設計画などの所謂環境アセス諸問題に取り組んできました。
今回の公害団体推薦委員外しについて、市は「大幅な環境改善」と健康被害への関心の低下を理由あげてきましたが、これに対しなくす会は事実を挙げてこれに反論する意見書を提出し、引き続き再選を申し入れました。
なお、2人の公募委員の選任については変わらないとのことでしたが、条例の趣旨からできるだけ増やすよう申し入れました。
画像は、臨海部などの街でいまも(毒を吸って)咲く夾竹桃。
大気汚染とぜん息の間に、有意な相関関係 現状の川崎市民でも
(2020年10月号)
公害への関心の薄さから、最近ではあまり公害被害について話が少なくなっているようです。しかし、最近の公害は目に見えなくなっているばかりか、喘息等の呼吸器疾患は依然として増えているのが実態です。問題はその原因が何であるかであり、この点環境省が毎年実施している「大気汚染に係るサ-ベイランス調査」の分析から、全国でもまた多くの都市で、大気汚染と健康被害の間に有意な相関関係があることが分りました。
これを検証・立証したのは、本会と連携する大阪から公害をなくす会の専門家のチ-ムですが、川崎市では幸区が入っており、それによると3才児・6才児とも、二酸化窒素(NO2)・二酸化硫黄(SO2)・浮遊粒子状物質(SPM)の汚染物質のすべてとの間で、有意な相関関係があることが分りました。
「改善された」と言われる現状の大気汚染下においても、公害被害があることがはっきりと証明されたことになります。従って、引き続き大気汚染対策の強化・被害者救済制度の拡充が測られるべきです。
参考資料:「環境省の『大気汚染に係る環境保健サ-ベイランス調査報告』平成29年度(2017年度)版検証結果の報告」(2020年7月/大阪から公害をなくす会「サ-ベイランス調査報告」検証プロジェクト)
この情報は、「川崎から公害をなくす会」により登録されました。