持続可能な地域交通を考える会 (SLTc)
                           

列車に乗って訪れる復興支援〜JR只見線〜展示

福島県会津地方と新潟県魚沼市を走るJR只見線

四季折々の風景を楽しめる風光明媚な路線として注目され、鉄道旅行が好きな人にもよく知られた存在ですが、通り抜けただけという人が多く、実際に現地を訪ね歩いたことのある人は少ないようです。

本会では、6年越しでようやく全線復旧の枠組みが決まった只見線とその沿線地域を応援したい思いから、復旧起工式と同じ日(2018年6月15日)から開催された「高津区市民活動見本市」会場にて、現地を度々訪ねている会員が撮影した写真を交えた展示を行いました。今後も機会があれば、同様の展示を提供できるよう用意していますので、お声がけください。 http://sltc.jp/contact#mail

列車に乗って訪れることが復興支援になる。そのことを伝えたくて、この展示を組みました。どうぞご覧ください。

(出典表記の無い写真は本会会員撮影)

 
   

福島県会津地方と、新潟県魚沼地方を結ぶ、JR只見線。
「奥会津」と呼ばれる山深い地域を走ります。

「只見線概要」 出典:JR東日本資料
http://www.jreast.co.jp/railway/pdf/20140819tadami.pdf

奥会津のもっとも奥、福島・新潟県境に位置する只見駅を発着する列車は、1日にわずか3本。
この只見線で訪れる人を歓迎するために、只見町は駅に観光案内所を設置して、ほぼ年中無休で(元日のみ休業)列車の出迎えと見送り、乗り継ぎ待ち時間での観光の案内、宿の手配、レンタサイクルや手荷物預かり、土産物の販売、ホームページやSNSを使った情報発信などを行っています。

このように駅が大事にされている様子を見ると、駅は町の玄関口であることを思い出させてくれますし、観光や帰省などで他の地域から訪れる人には嬉しいものです。

写真:只見駅構内に事務所を構え、列車の出迎え・見送りを続ける只見町観光まちづくり協会

只見町観光まちづくり協会 http://www.tadami-net.com/
只見駅は町の中心にあり、町役場まで徒歩数分。小さな町で、ビジネスホテルはおろかコンビニもありませんが、商店や飲食店などが駅の近くに点在しており、旅館も何軒かあります。でも、土地勘の無い人がこの駅に降り立ったとき、駅のすぐ近くにある施設にも気づかないことが多いもの。駅前の観光案内所は頼れる存在です。

もちろん、観光は若い人の貴重な雇用の場づくりにもなっているでしょう。

沿線では他にも金山町(会津川口駅)や三島町(会津宮下駅)などが、駅ナカや駅近に観光案内所を設けています。

福島県金山町 http://www.town.kaneyama.fukushima.jp/

三島町観光協会 http://www.mishima-kankou.net/

写真:会津宮下駅に設置された、外国人観光客向けシールアンケート。雪に閉ざされる厳冬期にもかかわらず、台湾をはじめ、多くの外国人観光客が訪れている。
忘れもしない2011年3月11日。東日本大震災は、福島県をはじめとする東北地方に甚大な被害をもたらしました。

その4ヶ月後、今度は会津地方に豪雨が発生。只見川が氾濫し、只見線の橋梁が流されるなどの甚大な被害が出ました。

この水害は、ダムから水があふれたことも一因と言われていますが、只見川に設置されている数多のダムはみな発電用。

尾瀬を水源とする只見川は四季を通じて水量が豊富なため、多くの発電用ダムが設置されており、主に関東地方へと電気を送るために使われています(一部、東北地方にも送られている)。

写真:第五只見川橋梁(JR只見線 会津川口〜本名間)写真右手の橋桁が流失した
ときに災害をもたらすこともある只見川ですが、只見線とともに、地域のつながりや対外的知名度の源泉でもあります。

自然豊かな山奥を流れる只見川は、春の新緑、夏の川霧、秋の紅葉、冬の雪景色と、四季折々に見せる表情が豊か。只見川に沿って走る只見線の橋が8つ架かっており(うち4本は豪雨被災により休止中)、この只見川と周囲の山々が織りなす自然の中を列車が走る情景は人気があり、その一瞬を見るために、国内外から観光客が訪れています。

この橋(第一只見川橋梁)の見晴らしが良い山の中腹に、三島町が散策路を整備したところ、その景色をひと目見ようと、毎日多くの人が訪れるようになりました。
ここを明るい時間帯に走る定期列車は、上下あわせて1日にわずか7本。最も人気のある朝9時台には何十人もの観光客が押し寄せます。とりわけ台湾では隠れた人気の観光スポットになっているようです。

写真:三島町の「ビューポイント」から見た、
冬の只見川(第一只見川橋梁)を渡る只見線列車
ところで、鉄道や路線バスでは「赤字」問題をよく耳にしますが、道路で「赤字」が問題になることはありません。なぜでしょうか?

どちらも無駄に造るのはよくありませんが、道路は税金で整備するのが当たり前になってしまっている一方で、鉄道や路線バスには厳しく採算(=全額運賃負担での整備・運営)を問われる傾向があり、この二重基準が、被災した鉄道の存廃問題に拍車をかけています。

日本よりも早くから自動車が普及し始めた欧州では、やはり日本よりも早くから、税金で整備された道路には自動車が溢れ返り、公害や交通事故、渋滞などの温床になるとともに、鉄道や路線バスなど公共交通機関の運営を厳しくし、都市機能が麻痺しました。
その後、欧州の公共交通機関は公設民営化などの改革が進められ、一度失った路面電車を再建する動きも活発です。

近年は日本でもクルマ依存を反省し、公共交通機関を見直す動きが出てきました。富山市や宇都宮市など、上下分離方式(施設整備は公共で行い、運営は民間事業者等が行う)による路線の拡充・新設に乗り出す自治体も出てきています。

写真:富山市が整備し、富山地方鉄道が運営する「セントラム」
2011年7月の豪雨で不通になった只見線も、両端から順次復旧してゆきましたが、奥会津のもっとも奥に位置し、橋梁流失などの被害が大きかった只見線の会津川口〜只見間は長く運休・バス代行が続き、鉄道での復旧が危ぶまれていました。しかし福島県と会津17市町村は諦めずにJR東日本と交渉を続け、6年越しで復旧の枠組みが決まりました。

街から遠く、沿線人口も少ないこの区間は、乗客も少なく、大きな「赤字」と「復旧費用」が復旧を阻んでいました。

人を運ぶだけならバスでも十分という考え方もあったようですが、地元のみなさんは自ら大きな負担を覚悟してまで、鉄道による復旧に取り組みました。この地域では、鉄道には人を運ぶだけでない価値があるという認識が共有されているからでしょう。

いわゆる「赤字ローカル線」の災害復旧は全国で問題になっていますが、国もようやく重い腰を上げ、2018年6月15日に鉄道軌道整備法が改正され、赤字の大きな鉄軌道路線が激甚災害で被災したときには、復旧費用に道路並みの国庫補助を行える制度が設けられました。
これで今回の復旧にかかる地元負担は軽減されますが、この区間は復旧後、鉄道施設は福島県に譲渡され、列車の運行はJR東日本が行う上下分離方式になります。つまり復旧後の線路や駅舎等の維持費、災害復旧費用は今後地元負担となります。道路と同様の条件になるので自然ではありますが、ここまでして鉄道を守った地域は、全国でも少ないのが実情です。

写真:只見〜会津川口間を走る代行バス。列車よりも増便されており、冬の積雪期にもほぼ定時運行されている。
魚沼と会津の米どころを結ぶ只見線。夏に訪ねると、車窓は一面の田園風景。冬は辺り一面の雪景色。沿線は全国有数の豪雪地帯でもあり、積雪が3メートルにもなります。

一面の田んぼを潤す水も、水力発電に使われる只見川の豊富な水量も、雪解け水で支えられています。魚沼や会津の豊富な雪解け水は、おいしいお米や電気になって、関東地方に住む私たちの生活を支えているのです。

写真:冬の大白川駅。全国でも有数の豪雪地帯を走る只見線では、冬は列車よりも除雪機の出番が多いことも。
鉄道や路線バスなどの公共交通機関は、将来を担う子どもたちの通学に、地域住民が街へ出かけるときに、観光や帰省で地域を訪れる人の足として、とても大切で頼れる存在。さらに交流人口の増加をもたらす効果もある鉄道も、毎日走らせるためには、乗客を増やす必要があります。

こうした山間地は、農業や発電などで私たち都市住民の生活を支えてくれている一方で、高齢化や人口減少、気候変動などに伴う自然災害の激甚化に早くから直面しています。

繁華街は無いが、豊かな水に恵まれ、静かさときれいな空気がある只見線沿線。地域の復興支援も兼ねて、列車に乗って出かけてみませんか。

写真:JR只見線 会津川口駅


(参考記事)
<JR只見線>復旧工事始まる 上下分離方式、21年度運行再開目指す(河北新報)
https://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201806/20180616_63005.html

JR只見線 改正鉄軌法適用へ 自治体負担半減に(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20180616/k00/00m/040/071000c

変革 第5部 JR東日本/4 「絶景鉄道」地元の覚悟(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20171124/ddm/002/020/093000c
情報掲載日:2018/07/04

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